フランスの親友 3

はるばる来たパリ北駅。

 

雑踏の中にDちゃんの姿は見えず。

 

ここから先はどうする術もなかった。

予定通りここで落ち合えば、後はDちゃんに

頼るだけだったので

この先の情報は何もなかった。

 

フランス語は全くできなかった。

 

独り、だった。

 

しばらくの間、ベンチに腰掛け待ってみた。

 

 

少し駅の外に出てみる。

 

でもすれ違いになることを恐れて、

またすぐに戻る。

 

振り返った瞬間にDちゃんがハッとした表情で

私を見つけているような気がして、、、。

 

出ては 戻り 出ては 戻り

 

そんなことを

どのくらいの時間

そして何度

繰り返しただろう、、、。

 

 

Dちゃんがちょっと驚いたような笑顔で

私を見つめて、、、  る!!!

 

「キキ!!」

 

よかった!!!!

 

 

私達はひしっと抱き合い、再会を喜んだ。

 

心底喜んだ。

 

 

 

 

 

 

フランスの親友 2

フェリーでフランスに着き、

待ち合わせの駅へ向かう列車KGVに乗りこむ。

 

そこそこ混み合った車内、

数泊分の荷物を入れた鞄に気をつかう。

 

何時何分に出発、何時何分に到着、、、

旅の行程はすべてあらかじめ決めてある。

でないと怖くて。

 

全く見知らぬ地。

Dちゃんだけが頼りで行くんだから。

 

 

ドキドキしながら列車が動き出すのを

待っていた。

車内アナウンスが流れている。

フランス語だからわからない。

 

待っていた。

動き出すのを。

動き、、、

出さない。

 

   ⁉︎

 

 

 

何かのトラブルで出発が遅れているんだ!

 

さっきのアナウンス‼︎

 

ああ、、、、どうしよう‼︎‼︎

 

 

とにかく待ち合わせに遅れることを

Dちゃんに連絡せねば!

 

いつ発車するかわからない列車から

恐る恐る下りて、公衆電話を探した。

 

 

勤め先の電話番号をもらっていた。

何かあったらここへ連絡して、と。

仕事の後、私との待ち合わせ駅に来てくれることになっていた。

 

英語で電話をかけるなんてド緊張だ。

ましてや受け手はフランス人。

 

しかし、、、!

この非常事態にひるんではいられない。

 

電話をかけた。

Dちゃんは不在だった。

もう向かっていたのだろう。

 

冷や汗かきつつ、出てくれた男性に

何とか事態を説明した。

列車の出発を気にしながらも、

正確に伝わるよう何度か繰り返し、

相手が理解しているか確かめた。

 

 

そして急いで再び列車に乗り込んだ。

 

不安な気持ちを抱えて

数十分遅れて出発した列車での旅が

ようやく始まった。

 

 

 

パリ北駅に到着!

 

 

祈るような気持ちで

Dちゃんの姿を探す、、、

 

 

が、姿はなかった、、、。

 

泣きたい気持ち、、、。

 

(続く)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フランスの親友

イギリス留学中に出会ったフランス人のDちゃん。

 

10歳ほど歳上と思われ、バリバリのキャリアウーマンだった。

 

クリエイティブな職業についていて、

会社では入口のドアに名前の記された

自分の部屋を与えられていた位だから

役職級だったに違いない。

 

なのにそんなキャリアを全く鼻にかけず

とてもフレンドリーで可愛い人だった。

 

 

授業の休憩時間になると、

隣に座ってさりげなく私のお茶代を

出してくれるのだった。

 

地下鉄の階段でコップを差し出して小銭を乞うホームレスがいれば、ためらいなくコインを入れてあげる、そんな女性だった。

 

 

 

私がまだイギリス滞在中、国へ帰ったDちゃんがフランスの自宅に招いてくれたことがある。

イースターホリデーを利用して

私はフランスの彼女を訪ねたのだ。

 

 

住んでいた町からフェリーが出ていてフランスへ渡れるのだった。

その後は、そこからKGVというフランスの新幹線のような列車に乗る。

列車が到着する"北駅"でDちゃんと落ち合う約束になっていた。

 

 

フランス語は全くできない私にはいささか冒険だった。

 

 

 

予期せぬハプニングが起こった、、、。

 

(続く)

 

 

 

 

 

 

イギリスの小金持ちにかこわれそうになった件 3

(前回より続き)

チェルシーは富裕層の暮らすエリア。

A氏のフラットの高級感のある雰囲気に、

やっぱいいなぁ、、、

なんて思う。

 

A氏が部屋のドアを開けると、、、

余裕のある生活が感じられる整った部屋。

 

 

ただ、人の気配なし、、、。

 

 

 

A氏は離婚後、独り生活していることは聞いていた。

 

今日、お掃除に来ているはずのハウスメイドはいずこに?

 

 

、、、気配なし!!

 

「どうだい? うちのハウスメイドはなかなか

いい仕事をするだろう?」

きれいに整った部屋に満足気なA氏。

 

 

ハウスメイドは仕事を終えて 

去った後なんだ、、、。

 

 

ヤバ!

 

一刻も早くここを去らなくちゃ!

 

 

「さあ何を食べに行くかな」とA氏。

 

そう、

今日はこれから外でランチする予定だった。

 

レストランガイドブックのような小冊子を手に

A氏は私の右隣にどっかっ、と座った。

初老なのでそんな動きになる。

 

気になるのは

その距離の近さよ〜!!

 

A氏は左手を私の肩にまわし、

右手で私の手を取って

いい部屋だろう、、等というようなことを

言っている。

 

ここに住むといい、等と。

 

 

は〜〜〜⁉︎

 

 

私の手を取っている手を

ゆる〜く上下に動かしながら、

自分の方へ。

自分の身体のよからぬ部分の上に持っていく。

 

!!!!!

 

「No !!!!」

 

彼の腕を振り払って私は立ち上がった。

 

 

私はもうじき日本に帰るって言ったでしょ?!

今日は最後の食事で楽しく過ごして、

ナイスな感じで、

バイバイしようと思ってたのに!!!

、、、というようなことを

英語でまくしたて、

 

もういいっ!!

 

そう言うと

思いきり音を立ててドアを閉め

飛び出した。

 

彼がどう思おうと知ったこっちゃない。

どうせ二度と会うこともない。

 

歳はとっていようと

あれはやっぱナンパだったのか、、、。

日本に行くというのも

ウソだったのだろう!

 

 

土地勘のない地域を足早に歩き回って

何とか駅にたどり着いた。

 

 

あ〜〜〜最悪。

 

 

かこわれの身になるところだった、、、。

 

 

 

 

イギリスの小金持ちにかこわれそうになった件 2

(前回より続き)

カフェロワイヤルで初老の紳士A氏と話し、

英会話の練習になるなぁ、なんて感じだった。

 

私が英語を学びに来ていると知って

「英語なら私が教えてあげられるよ」と

A氏は言った。

そうね、、、

身なりもきちんとした紳士だし、

おじいちゃまだし、

さして危険はなさそう。

それに、もうすぐ日本に行くと言っていたし。

少しの間なら面白い経験かも。

 

私はそれから時々食事をご馳走になった。

 

彼は本当に日本びいきだったようで

車も日本車に乗っていた。

そして富裕層の住むエリア、チェルシー

フラットに住んでいた。

 

ある日、今日は家に招待しよう、とか言う。

 

いくら危険性はなさそうといえ、万一ということがある。

プライベートな場所に行くつもりはなかった。

が、

今日はメイドが掃除に来ている日だ、

毎週掃除は彼女に任せているんだ、と言う。

 

ふーん、、、第三者がいてくれたら安心だわ、と、警戒心がちょっと薄れた。

 

だけど、、、

 

(続く)

 

 

イギリスの小金持ちにかこわれそうになった件

ある休日、いつものようにロンドンの

にぎやかな通りを歩いていると、

初老のイギリス紳士に声を掛けられた。

 

「ジャパニーズ・センターはどこか教えてもらえませんか?」

 

ジャパニーズセンターは日本の雑誌や何種類かの食べ物なんかを置いている店。

たまに

店頭に並べてある週刊誌の表紙を見て、

今 日本でどんなことが起きているのか

知ることができた。

 

私は紳士にすぐそこだ、と場所を告げた。

彼は、「私は不動産関係の仕事をしているんだが、今度 仕事でオオサカに行く予定なんだよ」

と言う。

「日本の話を少し聞きたいのですが、コーヒーでもどうかな」

、、、てなことを言う。

 

身なりのきちんとした紳士だし、

年齢も70代前半かなぁという位。

危険のキも感じなかったし、

ヒマだったし、

英会話の練習になるわ〜くらいの気持ちで

OKした。

 

 

彼がエスコートしたのは、

外観に憧れて一度行ってみたかった

『カフェ ロワイヤル』だった。

 

「今の人達はファストフードの店でよくお茶

するが、私はいつもここなんだ」

さすが〜!という貫禄。

 

コーヒーが運ばれて来た。

そしてチョコレートケーキも!

「あなたにこれも一緒に注文したんだが、

よかったかな」

 

スマートな対応に感動であった。

(続く)

 

 

 

ロンドンの地下鉄の駅で死にかけた話

日曜日はチャイルドシッターからも解放され、自由の身。

私はよくロンドン中心部へ出掛けた。

バスで20分程だったと記憶している。

 

仕事を辞めて留学して来ている身、

シッター料をもらうとはいえ、お小遣い程度。そうお金も使えないのだけれど、

街を歩きお店を見たり、人を見たり、

細かなものを買ったりすることが楽しかった。

 

ある冬の休日。

あまり体調がよくない感じがした。

が、迷わず出掛けた。

 

もともと体調不調の時も日常通り動きながら

直す方で寝込むことはまれだったし、

家におとなしくしていられない性格だった。

 

ピカデリーサーカスの地下鉄の駅で

呼吸困難になった。

 

痰が喉にからんで、咳をすることでそれを

取ろうとするのだけれど、

いくらゲホゲホやっても喉にへばりついて

動かない!

喉を通る空気がほんの細い隙間しか通らない

感覚で、

 

ヤバい、ヤバい、ヤバい、、、

 

駅の隅っこに行き壁の方を向いて

何とか痰を外へ出そうと必死で咳をする!

苦しくて涙が出てくる。

多分まわりの人はここまで苦しんでいるとは

気付いていないのだろう、、、。

 

やっとの思いでティッシュに口から吐き出した、それは、、、

 

水分のほとんどない、

固くなったガムのような痰だった。

 

 

死ぬかと思った。

 

 

その日の夕方から数日 熱が出た。

 

その頃のロンドンはインフルが大流行していた。